3.流体包有物測定及び解析
地熱開発において、地下温度を正確に把握することは、不可欠な作業の一つです。地下温度を知るためには、サーミスター温度計を用いた温度検層を始めとしていくつかの方法がありますが、流体包有物(図3-1)を使った温度計(図3-2)は、次のような利点を有しています。
- 地熱井掘削中でもコアやカッティングスが採取されていれば地下温度が推定できます。
- 貯留層とつながった大規模な逸水ヵ所では、多量の掘削泥水が流入している為、地熱井周辺の冷却がすすみ、温度検層や温度回復試験では、真の地下温度すなわち貯留層温度を知ることは困難です。逸水層の近傍あるいは逸水層の区間でスポットコア、カッティングス等の坑井地質試料が採取されれば、流体包有物温度計により精度の高い貯留層温度の推定が可能です(図3-3)。
- 温度検層を実施しなかった生産井や還元井でも、コアやカッティングスが採取・保存されていれば、その地点の地下温度が推定できます。
- 地下温度の推定だけでなく、均質化温度の分布から地熱流体の相状態が推定できます(図3-4)。
流体包有物の測定は、弊社が新エネルギー・産業技術総合開発機構(以降、NEDOと省略する)と共に研究開発を進めてきたコア・カッティングス解析手法の一つです。前述した1)顕微鏡下加熱装置を用いた流体包有物均質化温度測定(流体包有物温度計)の他に、2)顕微鏡下冷却装置を用いた氷融点測定(熱水中の塩濃度推定)、3)レーザーラマン分光分析装置を用いた流体包有物中のガス組成分析等(図3-5)もテーマとして取り組んでいます。さらに、測定精度の向上及び測定結果の地熱モデルへの適用技術の開発に努めています。
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